大学の門を過ぎると 十詩子は 「大学広いね 前の大学に比べると 広いね」と どうでも良いことを 話しました。 それで 静まりかえっていた ふたりに 会話が戻りました。 悟: そうなんだ 前の大学は ビジネス街という感じだったけど 今度の大学は 大学という感じだよね グランドがあったり 図書館が建っていたりして 十詩子: そうよね 大学という感じかな 悟: 工学部は 奥なんだ スチームの暖房機が付いているんだよ 冬になると カチンカチンとうるさいんだ。 十詩子: それは 少し古いね 昔専門学校にも 付いていたよね 悟: そうだね ぼくは スチーム暖房と 因縁があるのかも 十詩子: そんなことはないと思うけど 今日の授業は何なの 悟: 今日は構造力学と 環境だったかな 十詩子: 環境って何 悟: 環境工学と言うんだ 薬学の公衆衛生学と 似たところもあるんだよ 十詩子: 悟さんは 建築が好きだものね そんな和やかな話でしたが 十詩子は 悟の気に障るようなことを 言わないように 注意して話していました。 悟も そんな十詩子に気がついていました。