ふたりが 頼んだコーヒーと ケーキがやってきました。 コーヒーはその店の自慢のコーヒーでしたが ケーキは いつものケーキとは違います。 クリスマス用の 丸いケーキです。 ローソクと チョコレートのサンタさんが のっている分です。 十詩子は 美容院に行く途中で この店に頼んでおいたものなのです。 悟と十詩子の ふたりだけのクリスマスは、 続きます。 悟: わーこのケーキ良いよね 母が亡くなってから クリスマスにケーキを食べる習慣なんて 無くなってしまったよ。 十詩子: そうよね 私も就職してから そんなもの無かったわ ローソクに火をつけましょうか 悟さん所では してたでしょう? 悟: してました。 よく知っているね 十詩子: 知ってますよ。 悟さんは覚えていないの 20年間に 私が出てきた夢を 覚えていないの 悟: そんな夢見たかな でも僕の夢を なぜ悟さんが知っているの 十詩子: 少し複雑なのよ この話をしたら 明日になってしまうから またいつかね ズーといるんだから 話のネタを 置いておかなきゃ ひとつだけ言うけど クリスマスの メインメニューは 牡蠣のフライだったでしょう 悟: そうだよ 冬場だし おいしいから なぜ知っているの 十詩子: だから私は何でも知っているの ところで 今日から 悟さんの家に 泊まっても良いでしょう それを聞いた 悟は 飲みかけていた コーヒーを 一瞬吹き出しそうになりました。 悟: えっ それは ちょっと 早すぎるんでは ふたりには まだ時間があるんだし 結婚式も あげないと それに君の両親にも 会いに行かなくては 前にあったけど そんな挨拶をしていないし 今度の正月でも 行っていいかな 十詩子は少しがっかりした様子です。 十詩子: そうよね 正月に 豊岡に行ってくれるの 行きましょう 悟: うれしさのあまり 忘れたんだけど 十詩子さん 会社やめるの 惜しいんじゃないの 十詩子: もう辞めてきたんです。 明日からは 悟さんの所以外に 行くところはないの 悟: それは そうなの 退職を撤回するか 復職することはできないの 十詩子: それはできないわ 私は もう悟さん以外に 無いんです。 恥ずかしいから 何度も言わせないで下さい。 悟: ごめん ごめん