冴子にとっては 因縁の人でした。 高校の時に 思いを寄せていた 男子高校生です。 どんな巡り合わせか いました。 冴子は 忘れるはずがありません。 11年が経っていますが その容姿は 昔のまま 精悍な どことなく 不良ぽい そんな 男性です。 コックコートを 何となく 不良ぽく 着ていました。 どこが不良ぽいのかと 考えても わからないのですが 冴子には そんな風に思えるのです。 そのパン職人は 冴子のことは 全然わからない様子でした。 じろじろ見ていたので 不審者とは思っていても 自分に思いを寄せていた人とは 気が付きませんでした。 冴子は あまりやることもないので 時間さえあれば 毎日のように そのパン屋さんに 通っていました。 そのパン職人は 名札を見なくても 覚えていますが 佐伯勇治と 言います。 勇治は 店の中では 何か浮いているような 存在で 仕事は テキパキとしているようには見えましたが 何か違っているような 感じがしました。