道だけが 真新しく見えました。 誰も通らない道ばたに 2台の車を止めました。 寒い日でしたが 太陽が出ていて 外でも 耐えられる日でした。 車で持ってきていた 花束を 置きました。 みんなで 海を向かって 黙祷をしました。 薫子は 涙を流していました。 夏子ちゃんは 母親から言われていたように 目をつむっていました。 登は 目をつむりましたが 早く目を 開けてしまいました。 薄目で 他の面々を 見ていました。 薫子が 凄く悲しんでいる様子を 見ました。 夏子ちゃんも 真剣に 黙祷している姿を 見ました。 どれくらいの時間が経ったでしょうか 黙祷は 終わりました。 目元を 拭きながら 薫子は 夏子ちゃんの 頭を 撫でました。 誰もが 無言でした。 美奈子さんが 「それでは 近くの公民館が 借りてあります。 そちらに移動します。」と 声をかけたので 無言の世界から抜け出しました。 みんなは ぞろぞろと 車に乗って 予め 予約していた 公民館に行きました。 到着すると 車に積んできた お琴を 借りていた 運び込みました。 押入から 座布団を出して 並べました。 美奈子さんと 薫子は お琴の前に 座りました。 みんなは ほとんど無言です。 夏子ちゃんも みんなの後を 付いていくだけで 何も 話しませんでした。 登は レストランから 車に乗ってから 何もしゃべっていません。 何もしゃべらない 薫子にかわって 美奈子さんが 「陽一君を偲んで 高校の最後の音楽会で 一緒に演奏した曲を弾きます。 あの時は 陽一君が 薫子さんと 結婚するなんて 思いませんでした。 まして ここで 亡くなるなんて 全く思いませんでした。 陽一君の ご冥福を祈って 演奏致します。」 と言いました。