ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

長編小説「昭和」その28

まだまだ未熟な
亀太郎であろうと
熟練した清左衛門であろうと
もう真夏になっている
田んぼでの仕事は
暑いと言う一語に尽きます。

笠を被っていても 汗が噴き出してきます。

熱中症になる様な人は その時代は 生きては行けません。

きっと子供の時に 死んでしまったでしょう。

強健な 体と心を 持っている人だけが この時代に 農業に従事することが できるのです。

汗を 拭くこともできない かんかん照りの田んぼを ぬかるんだ足下を気にかけながら 進んでいきます。

時々降る 夕立が 恋しくなるような 暑い日々が続くと 人間とは反対に 稲は 株が多くなって 背も高くなります。

当時の稲は 背が高い品種であると言われています。

2番草が終わると 最後の除草の時期なります。

3番草を やっとこさ排除すると 充分に 株が増え 水の管理は 一段落します。

田んぼから水を 抜きます。

旧暦の 七夕の時期(年によりますが8月の末です)になると 天気は 安定して 農作業も 一休みの時期になります。

お盆の行事が 普通は 営まれます。

旧暦では お盆は7月の15日で 新暦では 8月末か9月はじめの頃です。

迎え火とか 精霊流しとか この時代は 全国的に行われていました。

清左衛門の家は 浄土真宗の信者です。

真宗の信者を 門徒と呼ばれていました。

門徒では 迷信を信じてはいけないという 教えがあって お盆だからと言って ほとんど何もしません。

亀太郎の 新仏(あらぼとけ)が あった年ですが いつものように 清左衛門の 母親が 毎日お灯明をつけ 正信経を 上げるだけの毎日です。

盆だからと言って 休むとか 特別の料理が出るとかいうことは ありません。