十詩子: 私は 十八の時に ふるさとをあとにしました。 それから40年弱が過ぎて あなたと またふるさとに帰ってきました。 高校卒業の時 校長先生が 『身をたて名をあげやよはげめよ』と言って 送られた言葉が やっと今日実現しました。 悟さんと結婚して 故郷に錦を飾ることができたんです 悟: 僕なんかと結婚したからと言って 故郷に錦は飾れないよ 十詩子: そんな事ないです。 私はとても幸せです。 これからもきっと幸せです。 いやこの瞬間命がなくなっても 幸せです。 悟: そんなー ながく一緒に幸せに暮らして欲しい 十詩子: もちろんそうですよね ふたりはもう 若くはないのですから 大きな幸せを作りましょうね。 悟: それにしましょう。 ふたりは 豊岡の市内を見渡せる 山の上で そんな話を していました。 遠くに コウノトリが舞っているのが見えました。 そんなふたりを 遠巻きに 十詩子の家族が 静かに見ていました。 その中の 小さい女の子が 「早く帰りたいよ」と 言ったので ふたりは 照れくさそうに 車の方へ歩き始めました。