十詩子は 平素は あまり会社のことや 自慢はしなかったのですが 自分でも 4年目で 課長代理になったことが 嬉しくて 話してしまったのです。 十詩子: 計算機は 本社の 地下室にあってね 計算機本体は いつも 15℃に保たれたお部屋の 真ん中に 鎮座ましましているの。 今度入った新しい機械は 東芝製で 三台の機械が 背中合わせに 三角状に 建っているの その周りには オープンデッキの テープレコーダーみたいな機械が いっぱい並んでいて 電線で繋がっているの。 悟: そんな機械のそばで働いているんだ、、 十詩子: 違うわ その機械に入れるのは 特定のエンジニアだけ 私たちは ガラスで仕切られた その前にいるの 電算機に 入力するための 入力機や ラインプリンターと呼ばれる 印刷機 それから 入力するための パンチカードを作る パンチャー があるの 机ぐらいの大きさの台に ボタンがいっぱい付いていて それを押すと 厚紙に 穴が開くの 穴の開いたカードを 入力機に読み取りさせると 計算機が 動いて ラインプリンターに 出力するという仕組み なんです。 悟: 君の説明はよくわかったけど あまりよくわからないよー とにかく大変なんだ 十詩子: 大変みたいね 私は 機械のことは全くわからないわ 私の仕事は どの様なデータを どの様に計算するかを プログラマーに 伝える係だから わからないの。 悟は 十詩子は 知り合った頃の 十詩子とは 全く違うと言うことが わかりました。 十詩子には 十詩子の大きな道があると思いました。