ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

ブログ小説「後半戦はこんな作戦で」Tシャツ編その4

今週のお題「お気に入りのTシャツ」

出社するふりをして
アパートに
帰りました。

「またうそをついてしまったわ。

あんなに
心配してくれているのに
、、、、、、
Tシャツが
まだあるって
、、、、、、、」
と考えてしまいました。

理子は
「純情」という文字を頼りに
記憶を呼び戻そうと
考え込みました。

「そんなことも
あったわ」
と思い出しました。

「その年の書道展のお題が
純情だったもので
純情と書いたのよね。

みんなからは
絵はヘタだけど
字は素晴らしいと
ほめられたわ

そうだわ
私って
毛筆が上手なんだ。

これで勝負してみましょう。」
と気が付いて
早速しまってあった
道道具を出しました。

墨をゆっくりすって
精神を統一して
一番気に入っている
毛筆で
履歴書を記入しました。

気合が入っているのか
書道の先生が言う
「覇気がある文字」で書けました。

翌日
ハローワークで紹介された会社に
面接に行き履歴書を出すと
担当者が
「この字はご自分で書かれたのですか」と聞いてきました。

「はい」と答えると
担当者は席を外して
上司を呼んできました。

若い上司は
「この書類を
毛筆で書いてほしいのですが
書けますか。

紙と道具はこんなものしかないのですが」と
話しかけてきました。

紙と道具を見て
「私は若輩者ですので
筆ペンでは
ちょっと
家に帰って持ってきましょうか。」と
答えました。

上司は私の住所を見て
それでは時間が必要です。

会社のすぐ近くに
文房具屋さんがあるので
そこに買いに行ってくださいと
担当者と一緒に買いに行きました。

その店で担当者が勧めるので
割りと高価な筆と墨・硯・用紙を買いました。

会社に帰って
いつものように
ゆっくりと墨をすって
新しい毛筆をおろして
書き始めました。

理子は
ゆっくり書いていると
感じていましたが
担当者の目には
相当の速さに映っていました。

書いているのは
新製品の案内状で
長文です。

但し書き部分は
細字なので
気を入れないと
均整がとれません。

小一時間で
全部書き終わりました。

最後に
誤字がないか
確認して
担当者に渡しました。

担当者は
それをもって上司のところへ
上司は
社長のところへ持っていきました。

出来上がって15分ほどたって
社長が
理子のところにやってきて
「すごいね

履歴もいいし

是非わが社に
お願いします。」と
告げられました。

理子は
「やったー
Tシャツのおかげ
お母さんの記憶のおかげ
純一のおかげ」と
心の中で
叫びました。