ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

長編小説「昭和」その205

鶴松は
家の建築に
声がかからなかったことを
残念に思っていました。

役に立たないことは分かっていても
頼んで欲しかったと
思ったのです。

前に
働き始めた
12才の頃からは
相当大きくなって
背だけは
親の清左衛門と
同じになっていました。

頼りにされていないと
鶴松は
思いました。

下働きなら
できると
思っていたのです。

清左衛門は
そんな
鶴松の
心が
見抜けなかったのです。

大地主となる
才覚があっても
親として
子供を育てる
才覚は
なかったのです。

家が出来上がって
引っ越しとなります。

引っ越しやさんというものが
ない時代ですから
自分のことは
自分ですることになります。

鶴松も
身の回りのもの
塾に行っているので
多くの書物を
まとめて
運びはじめました。

文机や
お布団なども
自分で運びました。

家人の他の者は
仕事があるので
はかどりませんが
なにしろ
鶴松は
時間がありあまるほどあります。

サッサと
新しい家に
一番乗りになりました。