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薫子は 登のように 懐疑心が 旺盛ではありませんが 今回に限っては 不安でした。 インターネットで 何となく 検索していると 『人生には大きな三つの運がある』と 書いてありました。 ひとつ目は 生まれた時の運 ふたつ目は 良き伴侶と出会う運 みっつ目は 死ぬ時期の運 です。 どんなに良き父母の間に生まれても どんなに良き伴侶を得たとしても 幸せには 限度がある。 いつかは 父母は死に 良き伴侶にも先立たれるかも知れません。 それ以外にも 仕事に挫折するかも知れませんし 自身が 長引く病を得るかも知れません。 いずれにせよ 不幸は やって来ます。 幸せな一生を 過ごすためには 死ぬ時期が 重要だと その ホームページは 言っていました。 薫子は その記述に 大いに 納得しました。 今考えると 陽一君は 幸せの 絶頂期に 死んでいったのだと 考えました。 陽一君が 不幸な人だと 今まで思っていたけど 本当は 幸せな人だったかも知れないと 思ったのです。 でも もう少し 生きていても 幸せだったろうにと 思うと 悲しくなりました。