ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

ロフトの奇跡 全話

ロフトの奇跡

皆様が
このお話しを信じるか
信じないかは
ご自由です。

しかし
超自然的な力が
存在するのを
頭から
否定するのはいかがでしょうか。

「何でやねん」と
思われる皆様も
ご一読ください。


大阪に近いあるところに
若い女性が住んでいました。

女性の名前は
莉子と言います。

容姿は
普通です。
美しくもなければ
醜くもなく
可愛くもなければ
憎らしくもない
莉子には申し訳ないが
普通でした。

いつも普通の
お化粧をするので
普通の顔になっていました。

そんな莉子は
自分の顔がいやでした。
もっと美人だったら
いいのに
と思っていました。

莉子は
正社員ではありません。
就職を頑張っていたんですが
面接で
不合格になるのです。

これもそれも
美人なら
きっと合格していたのに
と莉子は考えていました。

でも
顔を
取り替えることも出来ないし
莉子は
これが運命とあきらめていたのです。

子供の時から
ずーとこのあきらめは
続いていて
特に何をすることもなしに
過ごしていたのです。

11月のある日
テレビで
オリオン座の流星群が
現れると
報じていました。

その日の晩
莉子は
なぜか目がさえて
寝付けなかったので
流星群でも
見るために
ロフトの天窓を開けて
空を見ていました。

何気に空を見ていると
流れ星が見えました。
莉子は
「きれい」
と言いました。

夜空に
流れ星が流れるのが
美しかったので
莉子は
そういっただけだったのですが
それを聞いていた
ものがいたのです。

それを聞いていたのは
誰あろう
流星の妖精でした。

そうなんです。
流れ星が流れている間に
望みを言うと
叶うという
あの
迷信は
本当だったのです。

そういわれた
妖精は
莉子を
綺麗にしなくてはならなくなりました。

でも
魔法か何かで
パーと
美しくするというようなことは
妖精には
出来なかったのです。
なんとなれば
まだ未熟な妖精だっとのです。


それで
まず妖精は
その翌日
莉子に近づきました。


莉子が
会社に出かける時
後を付いて行きました。

そして莉子に声を掛けたのです。

妖精:
莉子さんじゃないですか
莉子さんですよね

後ろを振り向き
怪訝な顔で

莉子;
はい莉子ですが
どなた様ですか

妖精:
あっー
私は
妖
洋子です
折り入ってあなたにお願いがあるんです。

莉子:
どのような御用事ですか。
私会社に行かないと
遅刻してしまうのです。

妖精:
ごめんなさい
またご帰宅の時にうかがいます。

莉子:
お願いします。

こうして朝分かれました。
莉子は
洋子さんって
誰だったか
一日中
そんなことを考えていました。



夕方
莉子が
家に帰ると
扉の前で
妖精が待っていました。

妖精:
お帰りなさい

莉子:
洋子さんって言いましたよね
私にどのような
御用事ですか。

妖精:
私は
あなたを美しくするために
やってきました。

莉子:
えー
何なんですか

莉子は
不審な目で
妖精を見ました。

妖精:
話せば長くなるんですが
私は
洋子ではなくて
妖精なんです。

莉子はますます
不審な目で
妖精を見ました。
そして
後ずさりをしながら
妖精から
離れようとしました。

妖精:
私は
不審な者ではありません。
流れ星の妖精なんです。
あなたが
流れ星を見て
「きれい」と
言ったので
私はあなたを
美しくしなければならないのです。

莉子:
何かあなたの話は
要領がつかめません。
何かひと間違いをしておられるんじゃないですか
第一
不審者が私は不審者とは言いませんよね



妖精:
あなたは昨晩
流れ星を見て
「きれい」と
言ったでしょう。


莉子:
うー
言ったような気がしますが
それは流れ星が
きれいといったんですよ。

妖精;
そうなんですか
あなたは綺麗になりたくないんですか

莉子:
なりたいとは思うけど
それは
出来ないでしょう。

妖精:
それをするために私が来たのです。

莉子:
なんかの宗教の勧誘ですか
私間に合っていますから

妖精:
私は宗教の勧誘ではありません。
何度も言いますが
私は
妖精です。
私を信じてください。

莉子:
そんなの信じられません。

妖精:
私が
何か魔法を使いましょう
そしたら信じてくれますか。

莉子:
どんな魔法ですか

妖精:
其れではあそこの木を
輝かしてみます。

そういって
妖精は杖を出して
さっと一振りしました。
そうすると
木が
クリスマスツリーのように
パーと輝きました。

莉子:
おー輝きましたね
どんな仕掛けですか
前もって
何かしておいたでしょう。



妖精:
何もしてませんてば

莉子:
そんなことでは
信じられないわ

妖精:
じゃどんなことをすれば信じるのですか

莉子:
じゃ
世界の戦争を
全部なくして

妖精:
え
それは無理です
私の力では
そんな大きなことは
無理です。
もっと他にありませんか

莉子:
じゃ
戦争は
人為的だから難しいみたいだから
世界中の地震を
なくして

妖精:
そんな無理なことを言わないで
それは
神様でも無理と思います。
他にもっと小さいことで

莉子:
本当に出来るんですか
私をだまして
どうするつもりなんですか。
私お金持っていないし、、
警察呼びますよ

妖精:
疑い深い人ですね
私は妖精なんですって
じゃ
私空を飛んで見せましょう。
私だけが空を飛んでも
またなんか仕掛けがあるのか
と言われそうだから
莉子さんも
ご一緒に

そういって
再び妖精は
杖を振ると
妖精と莉子は
宙に舞い上がりました
莉子は突然のことに
叫びました。

莉子:
わー
わーー
降ろして
降ろして
分かったから

ふたりはゆっくりと地上に降りてきました。

妖精:
私が妖精であることがわかりましたか

莉子:
分かりました。
死ぬかと思った
それで私にどんなご用事

妖精:
だから
言っているじゃありませんか
私はあなたを綺麗にする
使命があるんです。

莉子:
なんかそれが怪しいのよね
あなたが
すごい力を持っていることは
分かったけど
それなら
私の前に現れなくても
遠くから
パーと
私を綺麗にしたらいいじゃないの

妖精:
それが出来るくらいなら
直ぐにやっています。

莉子:
なぜ出来ないんですか
先ほど空を飛んだじゃありませんか
あれも何か仕掛けがあったのですか。

妖精:
私は
まだ妖精に成り立てなんです。
だから
いろんな魔法が
全部使えないんです。
綺麗にすると言う魔法は
難しくて
あと
50年くらい修行しないと
習得できないと思います。


莉子:
50年もかかるのですか
それじゃ私
おばあさんになってしまいます。
そんな先で
綺麗になっても仕方ないじゃないですか。


妖精:
だから他の方法で
莉子さんを綺麗にできないか
お願いに来たのです。

莉子:
もう
やっぱり話しが
かみ合わないわ
どうしたいわけですか

妖精:
お願いなんだけど
こんな外で
話さずに
お家の中に入ってもいいですか。
ここは
ちょっと寒いんですけど。

莉子:
そうね
今日は寒いですね
じゃ
魔法で
暖かくすればいいんじゃないの
それも出来ないの


妖精:
それは出来ます。
でも
魔法を使うと
経費が要るんです。
出来るだけ抑えたいので
家の中に入れてほしいなー

莉子:
何度も言うけど
妖精のことは
分からないなー
じゃー
あまり悪そうな
人じゃないみたいだから
入ってみます。

妖精:
お言葉ですか
人じゃなくて
妖精なんです。
私は
人のよさそうな妖精
いや
妖精のよさそうな妖精
日本語の使い方を
間違えていますね
こんな時は
どんな風に言うんでしょうね。

莉子:
どうでもいいから
どうそ
こちらがお部屋です。
靴は脱ぐのですよ

妖精:
そんな事は分かっています。
以前にも
人間のうちに住んでいたことがあります。
15年位かな
莉子:
えー
私の家にも
そんな長い間
いるつもり
それって
単なる居候なの

妖精:
そんなことありませんよ
いる間は
掃除洗濯お料理
何でも手伝いますし
食費は
半分出しますから、、、

莉子:
分からないのよね
妖精って

妖精:
じゃ晩御飯作ってみます。
何がいいですか
冷蔵庫の中身は、、、と
あまりいいものがないですね。
今日は寒いから
シチューでもしましょうか。

莉子:
あっ
勝手に冷蔵庫開けて
、、、
本当に作ってくれるんですか。

妖精:
任しなさい
料理得意だから
たぶん莉子さんよりは
上手ですよ
だって人間の料理を作って
250年くらい経つもの

莉子:
あなたは
何歳なんですか
私と同い年のように見えるけど


妖精:
私は
人間の歳の数え方では
453歳です。
でも妖精の数え方では
まだ3歳で
まだまだです。

莉子:
えっ
驚くことばかりで
分からないわ

そんな話しをしながらも
妖精の手は
動いて
シチューを作っていました。

莉子:
妖精さんは
料理得意なんですね
任してもいいのかしら

妖精:
任していただいて
いいですよ。
でも時には
莉子さんも作ってください。
でないと
料理忘れてしまいますよ。
それから
私妖精ですけど
名前があるんです。

莉子:
ごめんなさい
名前聞いていなかったわ
お名前は

妖精:
私は
日本名を
星子って言います。

莉子:
そのままですね。

妖精:
神様がお付けになりますので
わりと安直みたいですよ。
森の妖精なんか
森子だったり
川の妖精は
川子だったり
、、、


莉子:
じゃこれから
妖精さんのこと
星子さんと呼びます。
ところで
星子さんは
今晩はこの部屋で寝るの
場所狭いけど

妖精:
お願いします。
帰るところないし
ホテルでしたら
お金もかかるし
どこでもいいです。
あっ
ロフトがいいです。

莉子:
ロフトは私が寝ているところ
ふたり分も
お布団を敷くと狭いかも

妖精:
私が我慢します。

莉子:
そういう意味じゃなくて
私が狭いの

妖精:
大丈夫ですって
明日ロフトを片付けておきますから
それからあさっては
私 妖精の研修会に出なければなりません。
一日居ませんのでよろしく。

莉子:
あ
あ そうですか

そんなことを話している間に
夕食が出来ました。
妖精は
冷蔵庫のありあわせで
作ったシチューと
野菜サラダ
それから
残り物の煮豆を
手際よく
盛り付けて
莉子の前に並べました。

莉子:
わー
さすがね
だてに歳をとっていないのね

莉子は
食べようとすると

妖精:
だめよ
直ぐに食べたらだめ
まず食事の感謝を
言わないと
だめよ
それが内面からも
綺麗になるのよ

莉子:
そうよね
ひとりで
食べていたから
そんなこと今まで気づかなかったわ

妖精:
私が今から食事の前の言葉を言うから
反復して
「天にましますわれらの神よ
今日の糧を
私たちに
お与えくださいまして
ありがとうございます。
明日もよき日なりますように
神様の祝福があらんことを」

莉子:
「天にましますわれらの神よ
今日の糧を
私たちに
お与えくださいまして
ありがとうございます。
明日もよき日なりますように
神様の祝福があらんことを」
ちょっとこれは
キリスト教なの
あなたはキリスト教の信者

妖精:
そんなこともないけど
食べましょ

莉子:
おいしそう
じゃ

妖精:
だめでしょう
もっとおしとやかに
左手で
持って
食べないと
優雅に食べるのよ

莉子:
えー
まただめだし
今日はいいでしょう
明日からね

そう言って
莉子は食べ始めました
莉子:
わーおいしいわ
私の家の台所で
作ったとは思えないほどの
おいしい出来栄え
ちょっとこれ
魔法を使ったとか

妖精:
こんなものに魔法は使うまでもありません。

莉子:
こんなに星子さんは
料理が上手なら
お店でもしたらいいのに
きっとはやるわよ

妖精:
えへっ
はやるかしら
でも
それは出来ないのよね
人間界で
金儲けしたら
いけない事になっているの
残念よね
ずーと大昔に
商売をして
除名になった
妖精がいたわ
破門されると
魔法も使えないし
それは惨めなものよ
だってただの人間になってしまうから
病気はするは
老化はするし
寿命があるは
私は
妖精の任務を
忠実に執行するだけね

莉子:
ところで
私を綺麗にするって
どんな風にするの

妖精:
まあそれは
あとでね

莉子は妖精のことを
色々と聞いてみましたが
肝心のことになると
妖精は話しませんでした。

それからテレビを見て
お風呂に入って
ロフトに布団を敷いて
ふたりは休みました。

翌朝天窓からの明かりで
目が覚めました。

隣を見ると
すでにお布団はなく
莉子は
「妖精の話は
みんな夢だったの?」と
一瞬思いましたが
下のキッチンから
音がするのです。
「あっ
やっぱり妖精は現実
どうしよう、、、」
と思いつつ
莉子は洋室に下りました。

莉子:
星子さん
おはようございます。
朝早いんですね。

妖精:
すみません
起こしてしまいましたか。
台所の掃除が気になっていたので
少し早起きしてしまいました。

直ぐに朝食作ります。
しばらく待っててください。

莉子:
すみません。
そんなことしていただいて
すみません。
 
妖精:
とんでも。ありませんわ
私居候ですから
こんなことをしないと罰が当たります。

莉子:
でも何から何までしてもらったら
すみません。

妖精:
本当に罰が当たるんですよ。
神様は私たち妖精の働きを
上から見ていて
あまり働かない妖精に
お仕置きをするんです。

莉子:
えー
どんなお仕置きなんですか。

妖精:
一番の罰は
除名・次は謹慎・戒告・訓告ですね
除名は前にも言ったように
大変なんです。
謹慎は
1年とか
10年とか
100年とか
ながい妖精になると
確か3500年とか
謹慎処分になって
懲罰区域から。出られないんです

莉子:
怖いですね。
どんな仕事も大変なんだ

妖精:
でもね
私 あなたのお手伝いさんのために
ここに来ているんじゃないので

莉子さんを
綺麗にするのが任務なんです。
おいおいに
してもらいますから、、、


莉子;
そうなんですか。
どんな風に私をきれいにしてくださるのですか。


妖精: まず、 立ち振る舞いを 優雅にしていただきます。 それから お料理やお裁縫お習字などの 一般的な技能を磨いてもらいます。 そして 服装も合うようにしてもらいます。 最後に お化粧で 美しくなってもらいます。 莉子: 最後のお化粧だけでいいように思いますが 妖精; それでは 神様の検査を合格しないわ 人間の美しさは 中からにじみ出るものよ 莉子: ということは 私は 中身も美しくないということなの?? ちょっと失礼な話しですよね。 妖精: えっ そうなりますか そうとは言っていませんけど 莉子: そういわなくても そう何じゃないの 妖精: そうかな そううじゃないけど あっ 莉子さん 会社に行く時間じゃありません 早く急がなきゃ 莉子: あ そうだわ その話の続きは 帰ってから 妖精: そんなに急いじゃだめ スリッパそろえて脱がなきゃ あー 家の中で走らない! ドアは静かに閉めなきゃ 妖精にいろんなことを指摘されながら 莉子は会社に出かけていってしまいました。 妖精は後片付けをして どのように今後したらいいか 考えました。
莉子が会社から
買い物をして
帰ってきました。

莉子は
ドアをそーと開けて
部屋の中を見回しました。

莉子には
まだ妖精が住み込んでいることが
夢の中の話ではないかと
思っていたのです。

莉子は
玄関に
スリッパが
ちゃんとそろえてあるし
靴は散らかっていないし

横の靴入れの上も
整理されているので
やっぱり妖精は
居るのだと
思いました。

莉子は
「ただいま」
と声を出しました。

部屋の向こうから
妖精の星子が
やってきました。

妖精:
お帰りなさい
今日は
お疲れですか
今日から綺麗になる
訓練をしましょうね。
まずは
後ろを向いて
靴をそろえましょう。
習慣になったら
なんて事ないんですよ。

莉子:
エー今日からですか
えーと
こんな風に

妖精:
そうじゃないですって

莉子:
靴はちゃんと揃えましたよ。

妖精:
靴が揃っているのはいいのですが、
そうじゃなくて
靴を揃える動作が
優雅ではないと
言っているんです。

莉子:
そろえる動作って

妖精:
まずね
私がやってみるからね

靴を履いて
それから外から入ってきて

莉子:
そこからやるんですか

妖精:
入るところから始まるのよ
本当は
ドアの
ずーと前から始まっているんだけど
あまりたくさんのことを言うと
混乱するから
今日はここからね

上がり框の
少し前で
足を揃えるの
それから
腰を落として
手を添えて
靴を脱ぐの

上に上がると
腰を落として
靴のここを持って
反対向けに
置くのよ

置くところは
邪魔にならないなるべく端に
置くのよ。

もし靴でいっぱいなら
横を向けて
壁際の少し遠くに置くの

今日は誰も置いていないから
ここね。

莉子さんやって見て

莉子:
入ってくるところから
するんですか
まず入ってきて
框の前で足を揃えて
腰を落として
手を添えて靴を脱ぐ
上がって
後ろを振り向いて
また腰を下ろして
靴を
端のここに揃えるのですね。

どっこいしょっと

妖精:
どっこいしょ
は、だめです。
NGですよ

莉子:
どっこいしょは
だめなんですね。

わーむつかしいし
星子さん
お姑さん
小姑みたい
それって
従わないとどうなるのですか。
私にお仕置きがあるとか

妖精:
莉子さんには
お仕置きなんかありませんけど
そんな状態がずーと続くと
私が
訓告・戒告処分になってしまうのです。


莉子:
訓告戒告処分とはどんなものなの

妖精:
訓告はね
神様から通知が来るの
がんばってするようにと
それでも
そんな状態が続くと
戒告処分になるの

神様から呼び出しがあって
直接
がんばるようにと
お言葉を受けるの

それでもうまくいかないときは
先輩の妖精の指導を受けて
するんだけど
それでもだめな場合は
謹慎処分なんです。
謹慎処分になると

莉子:
分かりました
分かりました。
私が素直にすればいいんですよね

妖精:
ありがとうございます。
私が妖精として
やっていけるのは
莉子さんのおかげです。
ありがたいことです。
がんばってみますので
よろしくお願いします。

莉子:
こちらこそよろしくお願いします。
ありがたいと思っていますけど
ちょっと聞いただけですから

妖精に
いろんなことを
指図される莉子でした。

やっとのことで
自分の家に
上がった莉子は
食卓の上を見ました。

から揚げと
野菜サラダ
煮豆とお汁が並べられていました。

莉子:
わーおいしそう
食べてもいい?

妖精:
食べる前に話しがあります。

莉子:
おあずけなの
食べてからでいいでしょう。
エーとなんだったかな
そうだ

「天にいるかも
神よ
今日のから揚げを
私に
与えてくれて
ありがとう。
明日も与えてほしいよ。
あすは、肉料理がいいな」

これでいいかな

妖精:
あっ
そんな言葉に代えている
今日は晩御飯抜き

莉子:
冗談よ
ーー早口でーー
「天にましますわれらの神よ
今日の糧を
私たちに
お与えくださいまして
ありがとうございます。
明日もよき日なりますように
神様の祝福があらんことを」

妖精:
心がこもっていないわ
やっぱりご飯抜きかな

莉子:
すみません
ーーゆっくりと心をこめてーー
「天にましますわれらの神よ
今日の糧を
私たちに
お与えくださいまして
ありがとうございます。
明日もよき日なりますように
神様の祝福があらんことを」


妖精:
はいはい


莉子:
二度返事はよろしくありませんじゃないですか。

妖精:
あらっ
そうですね
ごめんなさい。
じゃ
頂きましょう。

莉子:
頂きます。

ふたりは愉快に話しながら
食べ始めました。

妖精の作った料理は
本当においしくて
莉子は
大満足です。
莉子は
揚げ物は
苦手だったので
家では作らなかったので
妖精に作り方を
教えてもらいました。

今度の日曜日に
妖精が料理を教えるということで
話がまとまりました。


莉子:
ところでこの食材
どうしたの
冷蔵庫には
なかったでしょう

妖精:
そりゃ
スーパーで買ってきたの
レシートはこれよ
後でまとめて請求するから

莉子:
あっ
おいしいと思ったら
高いんじゃないの
エンゲル係数
高くなりそう。

妖精:
私が食材は半分出すから
大丈夫よ
経理のほうに
許可を取ってありますので

莉子:
妖精の世界も
経理とかあるの

妖精:
そりゃありますよ
締め切りまでに
領収書を出しておかないと
怒られるんですよ

莉子:
それって
訓告とか戒告とか

妖精:
そんなところまでは
いきませんよ。
そんなことで
戒告をとられたら
妖精も大変です。

莉子:
そうなの
私会社では
領収書を出してもらうほうだけど
出すのは大変みたいね

そんな取り留めのない話に
終始して
寝るので
ロフトに莉子は上りました。

莉子:
わーロフトが
片付いているじゃないの

今までのものは
どうしたの
私の本とか
ぬいぐるみとか

妖精:
それは
本は下の棚に
ぬいぐるみは
押入れの中よ
要るときはそこからとってきてね。
ぬいぐるみは
いらないんじゃないの


莉子:
えー
あのぬいぐるみの熊には
思い入れがあるの
あれはね
子供の時に
近所の
お姉さんから頂いたの
あれがあると
幸運がやってくると
言ってもらったのよ。

妖精:
だから私が来たじゃないの
私は
幸運をもたらす妖精よ

莉子:
えっ
そうなの

妖精:
だからぬいぐるみは
もういらないと思うよ
それから明日は
妖精の研修会で
朝から出かけるから
朝食は作っておくね
ちゃんと食べて出かけるのよ
ひとりの時も
ちゃんと言ってから
たべるのよ!

莉子:
星子さんは
まるでお母さんみたいね

ふたりは談笑しながら
眠りにつきました。

翌日莉子が
目がさめると
食卓には
ハムエッグ
それと
ヨーグルトとサラダ
が食卓に載っていました。

置手紙があって
「食べた後は
ちゃんと洗って
食器棚にしまっておくのよ。

それから
今日はごみの日だから
だして置くように

会社に遅れないように」
と書いてありました。

莉子は
星子がまるで
母親みたいなので
笑ってしまいました。


星子が
その日行った所は
研修会ではなくて
妖精の上司に
莉子のことを報告に行ったのです。

星子は
「莉子が
従順で聡明な人間だから
私の任務は
短期間で済むかもしれない」と
報告しました。

上司は
「綺麗になるより
もっと他のことを叶えてあげるほうが
いいのかもしれない。
より良い方法を
考えるように」と
訓示を受けました。

具体的な方法は
星子が決めなければなりません。

久しぶりに会った
先輩や同僚の
妖精と
そのことについて
話し合いましたが
それはやっぱり
「結婚じゃない」という
結論になりました。

星子も
多くの人間の
仲を取り持っていたので
「じゃ
そんな風にしてみましょう」
と考えて
人間世界に戻ってきました。


莉子が会社から帰る前に
家に着きました。

食卓や
流し周りが
綺麗になっているので
ひとまず安心しました。

「莉子もできるじゃないの
これなら大丈夫かも」
と独り言を言いながら
夕食を作り始めました。





莉子は
きょうは
星子がいないので
早く帰って
夕食でも作ろうと
スーパーで
お肉を買って帰りました。

お部屋に着くと
星子が帰っているので
「星子さん
ただいま」
といいながら
後ろ振り向いて
靴を揃えてから
上がってきました。

莉子:
星子さん今日は
遅くなるんじゃなかったんですか。
夕食の用意を買って来ましたの

星子:
ありがとう
あまりながくなかったの
早く終わったので
帰ってきました。

莉子:
私も手伝います。

そんな話をしながら
ふたりは仲良く

野菜炒めと
焼肉の料理を作りました。


食卓に
料理を並べて
例のお祈りをした後
ゆっくりと食べ始めました。

妖精:
ばっかり食べはだめよ
綺麗に食べなきゃ

お肉を少し切って食べるでしょう。
それからご飯
よくかんで食べるのよ
そのほうが優雅に見えるから、、
ガツガツしたらだめよ

莉子:
また だめだし なの
ハイ分かりました。

ばっかり食べはやめて
ゆっくりと優雅にね


妖精:
そうなのよ
ところで
莉子さん
好きな人いるの

莉子:
藪から棒になんていうことを聞くの
咽ぶじゃないですか。

妖精;
ごめんごめん
若い莉子さんだから
人間の若い女性は
結婚に憧れるんでしょう

莉子:
唐突ね
今は好きな人はいないの

妖精:
いつから

莉子:
大学出た時だから
大分たつは

妖精:
えー
でも好きな人は居るんでしょう。

莉子:
いないわ
どうせ好きになっても
願いが叶わないわ

妖精:
そんなことないでしょう
莉子さんは魅力的よ

莉子:
ありがとう
お世辞でもありがたいわ



莉子が寝た後
妖精は
莉子に誰かいい人を
めぐり合わせたらいいのだと思いました。

それもドラマティックに
合わせたら
きっとふたりは
幸せになるのだと思ったのです。

それで
「巡り合わせ助成機構」に問い合わすことになりました。
この組織は
最近妖精界に出来上がった組織で
不幸せな男女の巡り会わせを助成して
妖精の仕事を
楽にするものでした。

なかなか好評で
毎年登録数は
増加していて
マッチングが極めて短時間でできるようになっていました。

妖精は
例によって
杖をさっと振って
問い合わすと
宙から
ぱらっと
紙が舞い降りて来ました。

その紙には
一人だけ男の名前が書かれていました。

妖精は
「よっしゃ
この人で決まりだわ
これで私の仕事も
終わりになるかも

がんばっていい方法を考えなければ」
と考えたのです。

でも最初の出会いが
思い浮かびません。

出会いがしらに
ぶつかって
知り合うなんて
平凡だし
そうかといって
火事にでもなって
それを助けに行く男と
助けられる女
というタイプでもないようだし
どんな方法がいいか
妖精は
ずーと悩むことになります。

それで
妖精の図書館に行って
何か良いものは無いか
探してみることにしました。

莉子には
研修だといって
図書館に行きました。

図書館は
妖精で
にぎわっていました。

「めぐり合わす方法」なる本を
開架図書の棚から取り出してきて
読み始めました。

その本は
最近書かれた本で
人間界の
状況にあっていました。

インターネットを使った出会いなどが書かれていましたが
莉子は
インターネットをしないので
これはだめかと思いまいした。


妖精は散々本を読んで
考えました。

「よし
この手で行こう」
と決めて
莉子の家に帰ってきました。

そうすると
莉子がなにやら
浮かぬ顔で
座っているのです。

妖精:
ただ今
遅くなってごめんね
どうしたの
莉子
元気ないじゃないの

莉子:
、、、
お帰りなさい
星子
、、、

今日ね
会社の
健康診断で
陽性になったの

妖精:
えー
あなたが
妖精になったの

莉子:
何か間違えていない?
私健康診断で
腫瘍マーカーが
陽性になったの
だから明日病院で
精密検査をしなければならないの

妖精:
えっ
莉子さん
病気かもしれないの
心配ね
でも大丈夫よ
あなたは若いんだし
大丈夫よ

莉子:
若い人がなる
病気らしいのよ

妖精:
そうなの
でもまだ
病気と決まったわけはないんだし
あなたなら
大丈夫よ
大丈夫と思うわ
たぶん大丈夫

莉子:
星子さん
あまり根拠がない慰めは
もういいわ
私疲れたから寝るわ

それを聞いた妖精は
お布団を敷いてあげました。

翌日
莉子は
元気なく
病院へ向かいました。
妖精も一緒についていきました。

検査の結果は
3日後ということで
病院から帰りました。
しかしお医者さんの説明では
「3日後には
入院の支度をして
来たほうがいい」と
言われてしまいました。





莉子は
その言葉を聴いて
愕然となりました。

家に帰ると
まず
田舎の両親に電話をして
そのことを伝えました。

両親は
あさって
来阪すると言うことで
電話は切れました。

会社も
当分の間
休むと連絡を入れました。

翌日は
清荒神にお参りにもしました。

翌々日は
田舎から
両親が
駆けつけてくれました。

妖精は
友達ということで紹介してもらいました。

何人も
狭い部屋なので寝られないので
妖精は
「家に帰る」と言って
近くのホテルで
泊まりました。

次の日
莉子と両親それと妖精は
病院で先生の話を聞きました。

お医者様は
「莉子さんの病気は
大変悪いので
直ぐに入院してください。

検査をして
直ちに
抗がん剤治療を始めましょう。

病状が進行しているので
最悪の結果になるかもしれませんが
最善をの努力をします。」
と言われました。

莉子をはじめ
両親は
大変心配でした。

莉子は
見かけ上は
何の病状もなく
元気でした。

それなのに
死ぬかもしれないと聞いて
打ちのめされたようで
夢ではないかと
疑ったのは
言うまでもありません。

莉子の両親は
莉子のことが
大変心配でしたが
年末で
家業が忙しいので
星子に任せて
帰っていきました。

莉子は
その翌日から
抗がん剤治療が始まりました。

一日目は
何と言うことはなかったのですが
2日目になると
強い吐き気と
けだるい感じが
出てきて
日に日に増してくるのです。

一応終わる
10日目まで
何も食べられず
第一クルーは終わりました。

妖精は
毎日お見舞いに来ましたが
莉子は何も食べられなかったので
見ているだけでした。

投薬が休止されると
莉子は
無性にお腹がすいて
色んなものを
妖精に言って
買ってきてもらって
食べました。

第2クルーが始まると
また食べられなくなりました。
前よりもその症状は
ひどい様で
今度は
髪の毛も抜けてきました。
妖精に
毛糸の帽子を買ってきてもらって
莉子は被りました。

薬の休止期になったので
多少気分が良かったある日
莉子は
院内の散髪屋で
髪の毛を短くしてもらいました。

その帰り
売店で
お菓子を買って
陽だまりの
ベンチに座って
ため息をつきながら
お菓子を食べました。

莉子が
元気なく
ベンチに座って
お菓子を
ゆっくりと食べていると
点滴を掛ける車を
押しながら
男性が
前をゆっくりと歩いてきました。

男性の点滴には
遮光袋が
掛かっていました。

莉子は
自分の抗がん剤の点滴にも
遮光袋が掛かっていましたので
「この人も
抗がん剤治療かしら
元気なく大変そうね」と
思いました。

そんなことを考えていると
その男性の
点滴用の車の
車輪が
ちょっとしたくぼみに落ちて
莉子のほうに
倒れてきたのです。

莉子は
男性を見ていたので
「あっ、」と言って
とっさに
手をだして
その点滴用の車の支柱を
掴みました。

莉子の手と
男性の手が
触れて
男性は
「あっ
すみません。」
と声を出しました。

莉子は
「いえ
大丈夫ですか
ここにお座りになったら」
と言いました。

男性の名前は
陽一と言います。
抗がん剤治療ではなくて
ひどい食あたりで
食べられず
入院していたのです。

陽一は
莉子が言うように
ベンチに座って
休むことにしました。

陽一:
すみません
3日間も
何も食べていないもので
元気がなくて
すみません。

莉子:
そうですか
私は先日
10日間ほど
食べられなかったですが
大変ですね

陽一:
えっ
そうなんですか
それは大変でしたね
でも今は
食べられるみたいだし
病気も治ったんですね


莉子:
まだなんともいえないです。
後2回薬を受けなければなりませんので
あなたは
何回目ですか

陽一:
はー
何回目?
入院は一回目ですが

莉子:
あ、、
すみません
ごめんなさい
私誤解してました。
あなたはてっきり
私と同じ病気だと思っていて

陽一:
私は
ひどい食あたりで
今日まで絶食
明日から
食事が始まるそうです。
失礼ですが
あなたはどんなご病気ですか

莉子:
そうだったんですか
私は
、、、
、、

陽一:
別に話してくださらなくて結構です。
すみません立ち入ったことを
お聞きして
すみません。

莉子:
別にそれはよいのですが
私
癌なんです。

陽一:
ごめんなさい
そんなことお聞きして
すみません。
どうしましょう
誠にすみません。

莉子:
そんなに言って下さらなくてもいいですよ。


莉子と陽一が
ベンチで話していたころ
妖精は
病室に
莉子がいないので
探していました。

妖精は
確か莉子が散髪屋にいくと言っていたのを
思い出して
散髪屋に行く途中
莉子が
ベンチに座って
男性と話しているのを
目撃しました。

妖精は
「あ
莉子
あ
莉子が男性と話している
あれって出会い?
こんな病院で出会うなんて
ところであの男性は誰なの
ちょっと調べてみましょう」
と考えるなり
杖を一振りしました。

紙がぱっと現れて
妖精の手に収まりました。
「名前は
陽一
未婚
どこかで聞いたことのある名前だけど
あそうか
巡り合わせ助成機構で調べた男性と
同じだわ
こんな偶然あるのかしら
それとも
誰か他の妖精が仕向けたのかしら、
もし偶然としたら
これは奇跡よ
でもこの出会いの前に
莉子の病気が治る奇跡が
起きてほしいものだわ

人間の寿命は神様がお決めになったことだから
妖精にはどうすることもできないわ
神様にお願いしてみましょうか。
でもそんなこと
お聞きくださるような
神様ではないような気がするわ。

神様の口癖は
「万事 法のなすところ」
だものね
一度決めた法則にのっとって
するしかないのよね。

莉子さん死なないで
と願うばかりね

ところで
莉子と陽一は
仲がよさそうね
さすが
「巡り合わせ助成機構」が
マッチングした相手だけあるわ」
と独り言をいいながら
ふたりを見守りました。




妖精が見ているとも知らずに
莉子と陽一の話は
弾んでました。

莉子:
抗がん剤治療って
大変だとは聞いていたけど
こんなに大変だとは思わなかったです。

陽一:
そんなに大変なんですか。

莉子:
何しろ
吐き気はするし
しんどいし
しんどいのには
限りがないんです。

抗がん剤を入れていくと
際限なく
しんどくなるのです。

陽一:
それは大変ですね
私の病気とは大違いだ
でも
若いんだから
早く癌なんかやっつけて
元気にならなきゃ

莉子:
そうなんですけど
お医者様がね
この病気は
直らないかも
とおしゃるの

陽一:
そんな
あなたが希望をなくしてどうするんですか
がんばらなきゃ
あなたを愛してくれるご両親や
ご家族や
お友達もおられるんですし
あなたが病気だったら
どんなに悲しむことでしょう
早く元気になって
安心させなきゃ

あっ
ごめんなさい
差し出がましく
言って
あなたがどんなに苦しいか分かりもせずに
言ってすみません。

莉子:
いや
ご親切にありがとうございます。
でも
そうですよね
田舎の両親は
心配してますよね。

陽一:
田舎はどちらですか。

莉子:
姫路の向こうの
龍野のほうです。

陽一:
そうなんですか
奇遇ですね
私は
姫路です。

莉子:
姫路ですか
高校生の時は
姫路に良くお買い物に
出かけたものですわ

ふたりの話は
ふるさとの話になって
続きました。


小一時間ほど経って
陽一は
「また会いたいので
病室を教えてほしい」と言いました。

莉子は
部屋番号を教えて
分かれて
帰りました。





莉子が病室に帰ってくると
妖精が座って待っていました。

妖精:
お帰りなさい
気分は如何?

莉子:
少しはいいわ
髪の毛も
短くなって
さっぱりしたわ
これからの
治療に役立つかしら


妖精:
大丈夫よ
髪の毛は
また生えてくるし

莉子:
私
こんなにつらい治療しても
助からないんじゃないかしら
だったら
このまま死んだほうが
幸せかもしれないわ
両親には悪いけど
死んでしまいたいわ

妖精:
そんな弱気でどうするの
これからの人生じゃないの

莉子:
でも今まで
これと言った良い事も無かったし
これからもなさそうだし
生きていても
仕方がないんじゃないの

妖精:
何を言うのよ
そんな事言って
あなたを待っている人もいるから

莉子:
誰もそんな人いないわ
どうせ私は一人ぼっちで生きていかないといけない人間なのよ

妖精:
まだ言っている
あなたを待っている人は
きっといるから

莉子:
慰めはいいわ

妖精は
莉子をどのように勇気付けたらいいか
分かりませんでした。

その翌日
莉子が
病院の窓の外を
ベッドから
虚ろに見ていました。

化粧もせずに
ベッドの上で座っていたのです。

「莉子さんいらっしゃいますか」という
声がその時しました。

莉子は
とっさに
「はい」と答えました。

廊下から
陽一が入ってきました。

昨日は散髪屋に行くので
少しだけお化粧をしていたのですが
今日は
ベッドの上なので
何もせずにいました。
すっぴんの
莉子は
あわてました。

そんなあわてている莉子のことも知らず
陽一は
お菓子の袋を持って
入ってきたのです。

陽一:
今はいいでしょうか。
まだ
当分は薬の休止期なんでしょう。
今のうちは何でも食べて
体力を回復しておかないといけないんでしょう。

こんなものかって来ましたが
食べられますか。


莉子は
恥ずかしそうに

莉子:
ありがとうございます。
心配していただいて
お医者様は食べられるものなら
何でも食べてもいいと
おっしゃっておられます。

わー
これおいしそうなお菓子
私これ好きなんです。

莉子は袋の中の
お菓子を取って
子供のように喜びました。

陽一:
そんなに喜んでいただいたら
幸せです。

どうぞお召し上がりください。

莉子は早速袋を破って
食べようとしましたが
妖精が
食べる前に言う言葉
を言うようにと命じられているので
袋を置いて
言い始めました。

莉子:
「天にましますわれらの神よ
今日の糧を
私たちに
お与えくださいまして
ありがとうございます。
明日もよき日なりますように
神様の祝福があらんことを」

陽一は
莉子が
そんなことを言っていたので
唖然としながら
眺めていました。

陽一:
莉子さんは
キリスト教の信者なんですか。

莉子:
そんなことはありません。
家は仏教徒で
私は
宗教はこれといって
信じていませんが、、、
食べ始める時に
いつも言っているので
習慣になっているんです。

陽一:
それは良い習慣ですね
私も
見習おう

莉子:
陽一さんも
どうぞ

陽一:
だめなんです。
私は
食べたらだめなんです。
今日は
重湯だけ

明日から
おかゆだそうです。
でも重湯って
美味しいですよね。
4日ぶりですから。
こんなにご飯が美味しくいただけたのは
初めてです。

これって
本当に神様の
お恵みですね。

今まで信じませんでしたけど
これからは信じてみようと思います。
でも神様って
本当におられるのでしょうかね。

莉子:
そうですね。
私も最初は
神様の存在を信じませんでしたが
今は神様がおられると
思います。

陽一:
やっぱり病気になったことで
心境の変化ですか

莉子:
あー
まー
そういうことですね。

妖精が現れて
たびたび神様のことを
言っているとは
言えずに
そんな返事になりました。

陽一は
その翌日も
そして翌々日も来ました。
4日が経って
陽一は
退院になりました。

退院になる日
陽一は
同じようにお菓子の袋を
いっぱい持って
やってきました。

莉子は
また来ることが分かっていたので
お化粧をして待っていました。


莉子:
退院おめでとうございます。

陽一:
ありがとうございます。
でも退院すると
莉子さんに
毎日会えなくなります。
明日から
仕事ですから、、
営業で回らないと
こちら方面の
営業があればいいんですが、、
ちょっとないので

莉子:
それはそうですよね。
やっぱり仕事が一番ですもの
仕事にがんばってください。

陽一:
莉子さんも
早く元気になってください。
、、、、、
元気になったら
退院したら
、、
デートしてくれませんか。

莉子:
あっ
そうですね
喜んで、、、
でも
無理かもしれません、、
退院したいんですけど
無理でしょうね
ましてや
健康になるなんて


陽一:
大丈夫です
がんばってください。
私も
祈っていますから、、、

そんな話に終始して
陽一は
退院して行きました。

莉子は
初めての
デートの申し込みに
うれしくなりましたが
自分の病状を考えると
無理かもしれないと
悩みました。

そんなやり取りを
外で聞いたいた妖精は
どうすればいいか悩みながら
笑顔で部屋に入ってきました。

妖精:
良かったじゃないの
陽一さんて
いい人ね

莉子:
ええ
、、
星子さん
お願いがあるんですけど

私の病気
治してください。
健康にしてください。

妖精:
それは無理です。
私の力では無理です。
そんなことは神様の力でないと

莉子:
星子さん
神様にお願いしてくださいません。
なんでもしますから、、

妖精:
お願いしても
なかなか難しいと思います。
人間の命は
ある法則で決まっているんです。
何代も前の
神様がお決めになったことで
神様は
それたがえることは
なさらないみたいです。


莉子:
じゃ
私はここで死ぬのですか
抗がん剤治療は無駄なんですか?

妖精:
難しく言うとね
人間の寿命は
一部の人間を除いて
ある規則にのっとって決まっています。
その規則には
たくさんの
パラメーターがあって
そのパラメーターが変わることによって
寿命も変わるの

例えば生きようと努力すると
いくつかのパラメーターは
寿命を延ばすように働くらしいわ。
だから
抗がん剤治療は
無駄ではないんです。

莉子:
難しそうね。

妖精:
要は
生きようとすればいいのよ。

莉子:
えらく前置きは
難しかったのに
結論は
簡単ね

そうなの
じゃ
私今日から
生きようとするわ

妖精:
やっぱり陽一さんの影響は
大きいみたいね。

莉子は
少し顔を赤らめて

莉子:
えっ
そんなんじゃないって

薬の休止期が終わり
第三クルーの投薬が始まりました。

投薬の前の検査では
癌は
いまだ改善されていないと
いう状況でした。

一回目二回目より
副作用はひどく
お手洗いに
いくのも
おぼつかない様子で
星子は
莉子が本当にかわいそうになりました。
体重も
10kg以上も痩せ
頬もこけて
ふくよかだった
少し前の莉子を見る影もありません。

そんなひどい中
陽一は久しぶりに
お見舞いに来ました。

星子がとりついて
莉子に陽一が来たことを告げましたが、
今は会いたくないということで
陽一は
莉子には会わずに
帰っていきました。

莉子は
会いたかったけど
今の
自分を見せたくなかったのです。

そんな状態を見た妖精は
決心しました。

神様にお願いしようとしたのです。
妖精が神様に会うためには
事前に上司を通じて
上申書を出しておかなければならないのですが
会えるのは
早くて
半年後なので
そんなゆっくりでは間に合いません。

アポイントなしに
会いに行くことにしたのです。
そんな行為は
謹慎処分になるかもしれないのですが
莉子の状態を見ていると
いても経っても
おられなかったのです。

妖精は
杖を取り出し
ぱっと振って
一気に神様が執務する
神階に到着しました。

神階には
強い権限を持った
警備官がいて
見つかると厄介なので
魔法の力を使うことはできません。

人間の盗賊のように
抜き足差し足で
神様のいる場所に近づきました。

その後
気配を消して
数時間待ちました。

神様がひとりになった隙を付いて
妖精は飛び出しました。

妖精:
神様お願いがあります。
私の担当している莉子は
まだ若いのに
寿命は少ししかありません。

どうかもう少しだけ伸ばしていただけませんでしょうか。

その言葉に
反応して
警備官が
現れました。

神様:
警備のもの
大丈夫です。
星子
あなたの願いは
よく理解できた。
私も神階から見ていて
同情に値すると考えています。
しかし何事も
万事 法のなすところ
だから
寿命については私は何もできない。

莉子の
生命力・気力に頼るしかない。
高めるために
陽一を少し早めに
巡り合わせたじゃないか。

星子には
莉子に生きようとする
力を
上げるように
努力してもらいましょう。

今日はご苦労であった。
今回のことは許すが
次回からは
規則に従うように


そういうと
神様は
目配せをすると
妖精は
一気に莉子の前に戻ってきました。

妖精は
陽一が突然現れたのは
神様のおかげであることを
初めて知りました。
神様が実際に
その力を発揮することは
まれな出来事なので
これは奇跡だと思いました。
突然
現れた妖精に
莉子は
「星子
何?
今日は魔法を使って
そんなに急いで何か用事でもあるの」
と聞きました。

妖精:
あのね
陽一さんに会ったらどうだったの
今度来るときには
会えばいいでしょう

莉子:
それはできないは
こんな状態で会えば
きっと嫌われてしまうは
こういうのを
「100年の恋も冷める」というのよ

妖精:
そんなことないわ
陽一さんは分かっていらっしゃると思いますよ。

莉子:
でもそれは
頭で分かっていることでしょう
実際に会えば
無理じゃない

妖精:
それだったら
私が
お化粧してあげましょう。
より美しくしてあげるから

莉子:
そんなことできるの
今の私
自分でも鏡を見たくないくらいよ

妖精:
私を誰だと思っているの
妖精の星子よ

莉子:
そうだったわ
ごめんなさい
でもいつもお化粧しているわけにはいかないでしょう。

妖精:
だからくる時にするのよ

莉子:
くる時が分からないじゃないの

妖精:
だから私は妖精よ

莉子:
そうね
任しておくわ

そういいながら
莉子は疲れたのか
悪いのか
寝てしまいました。

妖精は
陽一に
会いにきてくれるよう
頼みに行くことにしました。

妖精:
陽一さん
ごめんなさい
莉子の友達の
星子です。
今日はお願いがあってきました。

陽一:
あー
分かっていますよ
どのようなご用事ですか。

妖精:
今日来てくださってありがとうございました。
お医者様の話では
病状は悪いらしいです。
生きようとする力があれば
それを乗り越えられるそうです。

莉子は
大変あなたのことが
気に入っているらしくて
今の生きがいは
陽一さんらしいです。

今度いらっしゃる時には
前もって連絡を
私のほうの頂ければ
お化粧して待っているそうです。

陽一:
私のようなものでも
よいなら行きますよ。
明日行きましょうか
夜間になりますが、、

妖精:
ありがとうございます。
莉子
喜びます。

約束をして
妖精は
莉子の病院に戻りました。

莉子は
苦しそうに
していました。
吐き気が止まらず
ゼーぜーしていましたが
明日陽一がくると聞くと
苦しい中起き上がりって
明日のことを
妖精に頼みました。


翌日も莉子の体に
遮光袋が掛けられた
点滴袋が繋がれました。

今日は
点滴の最終日
明日から休止期になる
最大の苦しい時でしたが
莉子は
朝からそわそわしていました。

妖精が
お化粧道具を持って
お部屋に入ってくると
身支度をして待っていました。

莉子:
遅いじゃないですか
早くしなきゃ

妖精:
大丈夫ですよ
まだ2時間もあるもの

莉子:
でも
他の用意もあるし
早く来るかもしれないでしょう

妖精:
大丈夫ってば
そんなこと心配しなくて
大丈夫よ
私は
妖精よ
する気になったら
一振りで
できるんだから
、、、
莉子
しんどそうだから
魔法でやったほうがいいんじゃないの

莉子:
えっ
そんな手抜きでいいの

妖精:
魔法は手抜きじゃないですよ
やっぱり
魔法でしよう
それのほうがいいよ

元気な時に
ゆっくりと
またお化粧をするから

あまりの苦しさに
莉子は
ベッドに横になってしまいました。

莉子は
息をあがって
苦しそうに
陽一を待っていました。

そんな時間が過ぎて
陽一の気配が
妖精には感じられたので

妖精:
莉子!
陽一さん来たみたいよ
魔法をかけるからね

そういって
妖精は
杖を一振り
しました。

その瞬間
莉子は
見違えるように
綺麗になりました。

頬がこけて
痩せているのも
顔色が悪いのも
抜けた髪の毛が
付いたパジャマも
一瞬のうちに
変わって
細い小顔で
透き通るよな白い肌の顔色に
そして下ろしたての
パジャマになりました。

妖精は
鏡で
莉子に自分の顔を
見てもらいました。

莉子:
あっ
こんなに
こんなに私って
美人なの
陽一さん驚くんじゃない

妖精:
じゃ
苦しいかもしれないけど
座って待っててね
陽一さん呼んでくるから

そういって
妖精は
エレベーターホールで
陽一を待ちました。

陽一は
造花の小さな花束を持って
やって来ました。

妖精:
来て下さって
ありがとうございます。
莉子喜びます。

陽一:
莉子さんのお加減
如何ですか

妖精:
今日は
第3クルーの投薬日の
最終日ですので
一番ひどい時なんです。
でも
頑張っているみたいですよ
朝から
お化粧して
待っているみたいです
あってやってください。
苦しいので
横になるように言ってやってください。


陽一:
分かりました。
大変な時に
来てよかったのでしょうか

妖精:
いいと思います。
励ましてやってください。

そういわれて
笑顔で
病室に入って行きました。

陽一は
莉子をみた時
驚きました。

前にあった
莉子とは全く別人のように
美しかったのです。
それに病人とは
思われないような
顔色で
驚きました。

陽一:
元気そうに見えるけど
大変なんですね

莉子:
来て頂いてありがとうございます。
今日は
恥ずかしいので
お化粧を
星子さんに
してもらったんです。
星子さん
お化粧のプロですから
こんな顔になってしまって
驚きました。

陽一:
前の莉子さんも綺麗でしたけど
今日は
とても素敵です。

頑張ってくださいね
元気になったら
デートしましょう

莉子:
早く元気になりたいのですけど
こんなに苦しいのに
あまり薬の効果が
出てないんです。
元気になりたいですが
なれるかどうか
分かりません。

陽一:
大丈夫ですよ
きっと大丈夫

ふたりは
少しの間
話をして
莉子が疲れるから
陽一は
退室していきました。

妖精は
陽一が持ってきた
造花の花束を
棚の上に
飾りました。

莉子は造花を見ながら
苦しい中
癌と戦っていました。

それから
一週間ごとに
陽一は
やって来ました。
薬の休止期になっても
食欲は
戻ってこず
食べづらかったですが
体力を回復するために
莉子は
押し込むように
食べていました。

そんな中
お医者様が
枕元にやってきて
「今回の
CT検査で
はっきりと癌の
縮小が
認められました。

1回目2回目は
全く効果がなかったのに
3回目で
こんなに効果が出るとは
予想もできませんでした。

仕上げの
4回目を
行うと
完治するかもしれませんよ。
4回目は
今の状況では
もっと大変と思いますが
やりますよね。」
とおっしゃいました。

莉子は
その言葉が嬉しかった。
「完治すれば
陽一と
デートができる」
という嬉しさに
涙が出てきました。

お医者様には
はっきりと
「はい
どんなに苦しくとも
やってください。
わたし元気になりたいんです」
と答えました。

妖精にその話をすると
「よかったね。
陽一さんの力かもしれませんね」
と言われてしまいました。

莉子はこのとき
体重は
15kg以上やせ
白血球や血小板は
回復していなかったのですが
第4回目の最後の
抗がん剤治療が
始まりました。



4回目の抗がん剤投与は
莉子にとっては
表現できない
つらさでした。

白血球と
血小板の数が
所定の数値より
下がってしまい
無菌状態を保つために
個室に移動し
面会謝絶になってしまいました。

星子さえ
莉子に会えない様になってしまいました。

当然陽一も来ましたが
面会謝絶で
ドアの
小さな窓から
莉子の影を見るくらいしかできませんでした。

星子は
もちろん妖精ですので
魔法の力で
莉子とは話していました。

陽一が来たことも
話をしました。

そんな時は
莉子は
嬉しそうでした。

抗がん剤治療も
最終日近くになった時
血小板が
危険ラインを
下回ったので
輸血も
しました。

それも3度にわたって
行われました。

無菌室から出られたのは
それから
3週間後でした。

無菌室から出たことを
知らされた
陽一は
急いで
病院までやって来ました。

未だに
白血球が低いので
莉子と陽一は
マスクを掛けての
対面になってしまいました。

大きなマスクでしたので
莉子は
お化粧もせずに
陽一と会いました。

陽一:
よく頑張ったね
もう大丈夫だよ
きっと
大丈夫だ

莉子:
私がj無菌室にいるときに
何度も
きていただいて
ありがとうございました。

陽一:
何の役にも立てなくて
ごめんね

莉子:
いいえ
励みになりました。

ふたりは
あまり話しませんでしたが
お互いに
見つめ合って
心は通っていると
思いいました。


いよいよ
最終の検査の結果が
出てきました。

お医者様は
「莉子さん
大変でしたね。

医学的には
癌が大きくなりすぎていて
完治は無理だと思っていましたが
莉子さんの
精神力のおかげだと思いますが
癌は
検査では
見つかりません。

後5年間は
経過観察で
5年経ってみないと
分かりませんが
ほぼ大丈夫でしょう

莉子さんおめでとう
退院していただきます。」
と告げられました。

莉子と
妖精は
手をとって
喜びました。

その結果は
直ぐに陽一にも告げられ
退院の日に
迎えに来てくれました。

今度は
妖精の指導を受け
莉子が
化粧してみました。

妖精が以前魔法で
したほど
うまくはできませんでしたが
莉子は満足でした。

しばらくの間
自宅で静養することになっていました。
両親は
田舎に帰ってくるように言いましたが
「星子がいるから
大丈夫」と言うことで
ロフトの部屋で静養ということになりました。

本当は
田舎に帰ると
陽一に会えなくなるので
帰りたくなかったのです。

静養している間
妖精は
美しい振る舞いを
懇切に
莉子に教えました。

2週間が過ぎると
もう体重も大分増え
しっかりしてきました。

そんなある日
陽一がやってきました。

ロフトで
話をすることになりました。

陽一:
ロフトって
落ち着くよね

莉子:
そうでしょう
このお部屋に
帰ってこれて
嬉しいわ
もう一時は
帰れないと
思っていました。
陽一さんまで
きてくれて
もっと嬉しい

陽一:
大分太ったよね

莉子:
あら
痩せている方がいいかしら

陽一:
そんな意味ではないよ
病気で痩せていたんだから
普通が一番じゃないの

莉子:
元気にならなきゃと思って
ご飯いっぱい食べているの
そのせいかもしれないわ
少し減らしましょう

陽一:
そんな心配はいらないんじゃないの
ところで
元気になったようだから
一度
私の家に来てくれないかな
両親にも
会って欲しいんだ

莉子:
えー
、、

陽一:
大丈夫だよ
君の事は詳しく伝えてあるから
大丈夫
両親がね
綺麗女性だと言ったら
会ってみたいと言うのだよ。

莉子:
え
そんな
ギャップがあるんじゃないの
ご両親が
がっかりしませんこと

陽一:
莉子さんは
十分に魅力的だし
美しいから
ありのままでいいんじゃないの

莉子:
ありのままは
少し気が引けます。

そんな話をして
その日は終わりました。

妖精にその話をすると
「それって
結婚を考えていると言うことでしょう。

おめでとう

でもうがった見方では
陽一さんて
マザコンかしら、、
心配ね」と答えました。

莉子は
結婚は嬉しいけれど
マザコンは困ると思いました。
今度行ったら
そんな所も
見てやろうと
思いました。


次の日曜日莉子は
念入りだけど
薄化粧のように見える
お化粧をして
髪は後ろで束ねて
控えめな色の
ワンピースの服を着て
陽一を待ちました。

陽一に迎いにきたので
一緒に陽一の家に行きました。

陽一の家は
一軒家の
少し古めかしそうな家で
立派な門と
毅然と建つ蔵
それに手入れが行き届いたお庭
それに
打ち水がさていました。

玄関に付くと
ご両親が出迎えてくれました。

莉子は
妖精に習ったように
靴を脱いで
腰を落として
靴を横に置きました。

座敷に通されると
これまた習ったように
手を付いて
挨拶しました。

できるだけ立ち振る舞いは
ゆっくりのほうが
優雅でいいと教わっていたので
そのようにしました。

お茶が出てきて
歓談した後
食事になったので
バックから
エプロンを取り出して
食事の用意を
手伝いました。

つつがなく
万事をこなして
暇の挨拶をして
家を出る時は
もう暗くなっていました。

陽一は
家まで
送ってくれました。

陽一:
今日はありがとう
疲れたでしょう。
でも
莉子さんて
振る舞いが
優雅ですよね。

親もびっくりしていました。

莉子:
そんなことないです。
緊張しました。
気に入ってもらえましたでしょうか。

陽一;
もちろんですとも
それよりも
莉子さんこそ
私の両親気に入ってくださったでしょうか


莉子:
とんでもありませんわ。

陽一が帰ると
妖精が帰ってきて

妖精:
よかった
マザコンじゃなかった?
大丈夫だった
私の役目も
一応終わりかな

莉子:
大丈夫みたい
星子さんには
大変お世話になったけど
どう恩返しすればいいの

妖精:
恩返しなんかいらないわ
私はあなたが幸せになったら
それで私の仕事は
完成するの

きっと今回のことで
私褒賞をいただけそうよ

莉子:
ほうしょう って何?

妖精:
褒賞はね
ご褒美よ

莉子:
具体的には
何なの

妖精:
いろいろあるんだけど
魔法の引換券だったり
有給休暇だったり
神様に頭を撫でられたり

分からないわ
神様は
これだけは
「万事法のなすところ」の
例外だから

莉子:
頭を撫でられるのは
良いことなの

妖精:
それは大変光栄なことなのよ
それに
神様に触られると
神通力が
使えるようになるのよ

莉子;
そうなの
私も触ってもらおうかしら
人間には無理なの

妖精:
いや全く無理と言うことはないけど
神様の目に留まるようなことがないと
もちろん良いことでよ

莉子:
それは無理ね
私は平凡な
OLだもの

妖精:
別にOLでもいいのよ
神様は
そのような
職業で選別しないもの

そんな話をしながら
ふたりは
和気藹々と
過ごしていました。




それから
莉子は会社に復帰して
仕事と
陽一とのデートに忙しくなりました。

春になると
陽一の家から
莉子の
実家に
結納金が届き
婚約になりました。

結婚の日取りも決まって
莉子は
嬉しくてなりません。

そんなある日
妖精は
莉子に
話しました。

妖精;
もう私の
仕事は
今日までになってしまいました。
上司からの
命令で
妖精界に
帰らなければなりません。

莉子:
えっ
星子さん
突然の
お別れなんですか

あなたのおかげで
癌からも治って
その上
結婚までできて
なんとお礼を言ったらいいか
本当にありがとう

でも星子さんがいなくなると
寂しくなるわ
もっといてもらえる方法はないかしら

今日は私が
お料理を作ってみるわ

妖精:
ありがとう
短い間だったけど
楽しかったわ
妖精界に戻っても
莉子のことは忘れないわ

莉子は
妖精から教えてもらった
お料理を
作って
食べました。

そして真夜中の
12時が近づきました。

「これでお別れ」と妖精がいうと
妖精の姿は
徐々に消えて
ロフトの開けた天窓から
外のほうに
光の帯のようになって
空に向かって
行ってしまいました。

それは流れ星のようでした。

莉子は
「星子
さよなら
ありがとう」と
言いました。

それっきり
莉子は
妖精と会うことはありませんでした。

莉子は
妖精に習ったように
日々の生活を
陽一と過ごしました。
子供もできて
とても幸せでした。

あるとき
子供と
田舎に行ったときに
「流れ星」と
叫びました。

莉子は
「星子さん
また仕事しているかしら
あなたのおかげで
今は幸せです。
、、、、」と
心の中でつぶやきました。


一応
「ロフトの奇跡」
終わります。

あなたの周りにも
妖精が来ていませんか。
何かあなたの周りで
奇跡が起きたら
それは
妖精のおかげだと
思ってください。

「ロフトの奇跡」
お読みいただきありがとうございます。

如何だったでしょうか。

人間は
どうしようもないような
人間の英知では
解決できないような時には
きっと
何かにお願いすると思います。

神様だったり
あるいは
力を持っている人間だったり
あるいは
自分自身だったりします。

神様が
神通力を
持っておられることは
当然のことです。

でも
ひょっとして
あなた自身にも
神通力と言うか
超能力がないでしょうか。

あなた自身の
超能力が現れて
問題を解決した経験は
ないでしょうか。

ながく生きていると
思い当たるところも
あると思います。

そんな時には
誰かが
あなたを
助けていただいているんだと
考えてください。

きっとあなたはひとりじゃない
あなたを助ける人は必ず周りにいます。

あなたは奇跡を信じますか?
私は奇跡を信じます。
信じたいです。