ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ブログ小説

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その11

医師は付き添いの家族があまりにも多いので驚いている様子でした。 一通り説明を受けました。 先生は質問はありますかと聞かれましたがだれも質問できませんでした。 手術は翌日の1時と言うことで乳母だけが残って後は帰りました。 夕暮れが近づいて何かも…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その10

家族は手術を受けるべきかするべきでないか相当悩んで話し合っていたようでした。 約束の入院日が来ました。 病状が快方に向かっているとも言えないのでやはり手術することになりました。 学校に母親が行って話しをしました。 4人の大人と1人の小さな病人は…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その9

その日は日も落ちた頃家に着きました。 真知子が心配そうに待っていました。 真知子は家の前でみんなの帰りを待っていました。 学校のプリントを持って待っていました。 一同が帰ると他のみんなから質問攻めです。 お祖父さんが報告をするとみんなの心配は大…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その8

診察室には大きめの椅子に教授が座っていてそのまわりにインターン・看護婦が立って待っていました。 この中に5人が入れば看護師の数人は部屋から出るしかありませんでした。 大勢の心配そうな顔で眺められて医師は躊躇しました ギュウギュウの診察室で医師…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その7

雪子は小さいのでわかりませんでした。 乳母も保護者でないので診断結果を持ち帰るだけです、 乳母は結果を両親とお祖父さんに報告しました。 家族のみんなはよくわかりませんでした。 お祖父さんは仮病でなかったのだと気が付いて申し訳なく思いました。 教…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その6

学生の問診から始まって予診教授の診察検査と続きました。 朝は早くから来て3時過ぎに再び教授の診察となります。 教授はまさに名医のように見えました。 今なら血液検査でたちどころにわかる病気ですが当時はそのようなことがなくて名医に頼るしかなかった…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その5

幼稚園に元気に真知子と最初は行っていました。 当時は車が殆ど通りませんでしたので安全で子供2人で登園してました。 お祖父さんは賢い真知子が付いていたので大丈夫と思っていたのです。 少し暖かくなった頃雪子は体の調子が悪くなってきました。 どこと言…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その4

真知子はとても雪子と同じ歳とは思えぬ聡明な女の子で自分の立場をよくわきまえていました。 雪子はワガママなお嬢さまではなかったけど世間知らずでした。 だれも雪子の常識が普通の人の非常識だと言うことを告げなかったのです。 それは雪子のことを思って…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その3

冬の寒い日は大きないろりのあるお部屋と大きな暖炉のある応接室で過ごしていました。 暑い夏は大きな母屋の一番風が通る土間の横で涼を取っていました。 外に出ることなしにいろんな事がすませましたので雪子は太陽に当たることもなく白い肌がますます白く…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その2

雪子が生まれたのは朝鮮戦争特需で日本中が戦後から脱却し始めていた昭和27年のことです。 露地物のイチゴが出入りの業者からよく持って来た6月の18日に生まれました。 雪子は大学生の頃に話題になって気が付くのですが『社会の悪弊』ととも訳されるキャンサ…

ブログ小説「東大阪のお嬢さま『雪子』」その1

江戸時代には大地主で付近一帯を持っていた秋月家は大正時代の初めに当主が農機具を作る工場を始めました。 農業の近代化が叫ばれていた時流に乗って工場は繁盛しました。 秋月農機具製作所という会社でした。 その経営者の家に雪子は生まれてきました。 雪…

ブログ小説「アスカルの恩返し」全話

ブログ小説「アスカルの恩返し」 アスカルの恩返し 僕の名前はアスカル今は由美(ゆみ)です。 僕の前世のことから話をするね。 前前世は忘れてしまったから話せませんので前世からです。 前世は僕は犬だったんだ。 1998年3月15日に三つ子で生まれてきました…

小説『冴子』震災部分その16

もう暗くなっていました。 大阪まで行ってホテルに泊まることになりました。 地震以来いや勇治と駆け落ちしてから初めて大阪に来て大阪の変わりようにびっくりするばかりです。 その立派さはともかくとして全く地震とは関係なく生活が行われていることに驚い…

小説『冴子』震災部分その14

勇治の家族と倫子だけが広い座敷で黙って座っていました。 勇治の母親が「倫子さんご苦労さんでしたね。 ゆっくりこちらで休んでいって下さい。 ズーとこちらにすんでもいいですよ 何もないけど離れが空いているからそこに住んで私の仕事を手伝ってくれても…

小説『冴子』震災部分その13

倫子は寝台車の前に座って係員に渡された死体検案書を持ちました。 雨は激しくなりフロントガラスのワイパーは激しく左右に振れました。 岡山までの道のりはながく思いました。 お昼おそく家に到着して頼んであったお葬式屋さんは手際よく祭壇を作りました。…

小説『冴子』震災部分その12

倫子が寝ている入り口は枕元を大勢の人が歩くので必ず目が覚めるところです。 しかし炊飯が始まる6時まではじっと布団の中で寝返りをうっていました。 やっと6時になったので起きて倫子は炊事場になっている体育館横の手洗い場に行きました。 今日は震災から…

小説『冴子』震災部分その11

当たり前ですが不自由な避難所暮らしが始まりました。 倫子は40才の働き盛りで血気あふれる時ですので避難所で世話役のようなことをやって食事の用意とかしていました。 遺体が安置されることになる寺に朝晩に行って勇治の遺体が来ていないか聞きました。 遺…

小説『冴子』震災部分その10

店から遺体が発見されたことを岡山の義理の父母に電話で連絡しなければならないと気が付きました。 公衆電話は殆どなくなっているか繋がらなくなっていましたが避難所に無料の電話があると話しに聞きました。 そこで近くの小学校へ行きました。 電話が机に並…

小説『冴子』震災部分その9

「もう少し時間があればもう少し私に力があればもう少し手伝ってくれる人がいればきっと助かったのに、、、、、、、、、、」と残念と後悔と懺悔で一杯です。 「ご遺体は検視のあと○○寺に安置されます。 安置されるのは今夕です。 身元が判明次第引き渡します…

小説『冴子』震災部分その8

小説『冴子』なのに 本文中の女性の名前が 倫子(のりこ)と異なっているのか 疑問に持たれている方も おおいかなと 思っています。 冴子は 駆け落ちしたときに 見つからないように 名前を 倫子に変えたのです。 不倫なのに 倫子なんて すこしあてこすりです…

小説『冴子』震災部分その8

「勇治今すぐ会いたい!」と倫子は叫びました。 遠くから「必ず会えるからもう少しがんばってそこで暮らして それが運命なんだ 僕たちの運命なんだ 倫子がそれを全うしないと僕たちは永遠に会えなくなってしまう かならず倫子の運命を終えてからこちらに来な…

小説『冴子』震災部分その7

そしてまた涙です。 泣いていると河本さんが家族でまた来ました。 母親は相当倫子に負けず劣らず悲痛の様子です。 倫子は母親と抱き合ってまた崩れました。 助けに行こうにまだまだ残り火が有ってちかづけたもではありません。 ふたりは焦げ臭い臭いなか焼け…

小説『冴子』震災部分その6

夜明けの頃はとても寒くて火に近づきました。 昨日汗をかいて下着が濡れたためかもしれません。 凍れる程寒い中北の空は明るくなっていました。 まだまだ燃えているのです。 水道がでないので消火栓から水が出ません。 全く消防隊は用をなしません。 燃え放…

小説『冴子』震災部分その5

夜明けの頃はとても寒くて火に近づきました。 昨日汗をかいて下着が濡れたためかもしれません。 凍れる程寒い中北の空は明るくなっていました。 まだまだ燃えているのです。 水道がでないので消火栓から水が出ません。 全く消防隊は用をなしません。 燃え放…

小説『冴子』震災部分その5

大きなコンクリートの塊があってなかなか進めません。 しばらくの時間が経つと消防士さんが防火服を着て穴の中に飛び込んできました。 穴の中は火炎が入り込まないような構造なのかあまり暑くないのです。 でももう穴の外は防火服でないと近づかないような状…

小説『冴子』震災部分その4

掘っている穴がふたりが入るのが精一杯で力のない倫子より倫子の兄たちに頼む方が早く掘り出せるというので倫子は後ろで出てくるガラを運ぶ役になっていました。 でも時々風向きがこっちの方になった時煙がそして火炎がやってくるようになりました。 助けに…

小説『冴子』震災部分その3

私どもでは朝日新聞を取っていますが 今日の夕刊に震災時のことが書いてありました。 『妻が足下で火にのまれた』と、、、、、、、、 『冴子』の小説の中にもそのように ________________________________ 後ろの方からです…

小説『冴子』震災部分その2

お店の前まで来た時「勇治さん」とできる限りの大声で叫びました。 かすかに勇治の声が帰ってきたように倫子には聞こえました。 お店は二階建てでしたがその形はもうありません。 屋根の形も残っていません。 お店はがれきの山です。 隣の3階建てのビルがお…

小説『冴子』震災部分その1

時は経て平成7年の正月になりました。 倫子と勇治はこの年45才になります。 前年より勇治は膝の具合が悪かったので正月は厄落としに神社参りでもしようかという話しになりました。 西宮の門戸の厄神さんにふたりで参ることにしました。 湊川から電車に乗って…

もうすぐ1月17日ですね。あの時のこと今も覚えているでしょうか

皆様は何歳でしょうか? 30歳以上の方でないと あまり記憶がないかも知れませんね。 私は 経験しました。 それ以上に 震災に遭った人の お話を聞いたことがあります。 そんな話 聞きたくないくらい 悲惨です。 でも 近づいてきた この日くらいは 思い出して…