ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

長編小説「昭和」

長編小説「昭和」その111

この時代の フォーマルな服装は 紋付き袴です。 袴はともかく 紋付きを 着るだけで フォーマルになります。 紋付きのような 一張羅(いっちょうらい: 1枚しかない上等なもの)や 綿入れ(綿のはいった着物)は 夏場 ほどいて 洗い張りをするのが 普通です。…

長編小説「昭和」その110

裁縫仕事は 着物の仕立てや 繕いだけではありません。 夏になると お布団も 洗わなければなりません。 お布団は 家財道具の中では 値高いものです。 お布団を 酷使しますので 痛みが激しいのです。 夏場 お布団を使わない時期に お布団の中の綿を 出して 覆…

長編小説「昭和」その109

服は もちろん 着物ですが 着物は 材料の 反物を 買って作ります。 現金収入の少ない 小作人には 相当の出費です。 反物を買って 着物を作るのです。 当時の女性は 裁縫は 必ず習得しなければ ならない技術です。 裁縫ができないものは 結婚は 絶対にできま…

長編小説「昭和」その108

底だけ鉄できた 桶で 燃えないのかと お思いでしょうが それが燃えないのです。 鉄の部分だけ 火が当たるような 仕掛けになっています。 焚き物は 薪ではなく 藁です。 今津は 薪が取れるような 入会地を持っていませんので 薪は買わなければならないのです…

長編小説「昭和」その107

おやつと言っても ケーキやポテトチップスのようなものは ありません。 麦飯のにぎりめしなら 最高ですが そのようなものが でることなど ありません。 サツマイモの 蒸し物や スイカとか そんなものが多いのです。 当時の サツマイモや スイカは 全く美味し…

長編小説「昭和」その106

昼前になると 家に帰ります。 昼のご飯の用意です。 灰の中の 炭の火種を 出して 炊事の開始です。 同じようなメニューです。 食材が 同じですから 季節で 先ず同じ メニューです。 時計がありませんので 太陽の位置で 昼かどうか 判断します。 お昼になると…

長編小説「昭和」その105

川というのは 農業用用水路です。 その中でも 水量の多いところでないと いけません。 清左衛門の家からは 少し離れていて 桶に 洗濯物を入れて 歩いて行きます。 洗濯場の 川には 洗濯がし易いように 一部だけ 石張りになっています。 洗濯物を 水に浸け 石…

長編小説「昭和」その104

当時は 食器洗いの洗剤など ありませんので 磨き砂が 唯一のものです。 磨き砂と言っても わからない人がいると思いますが 今風に言えば 「クレンザー」です。 当時は 前述の 歯磨き粉と同じように 六甲の 山から 取ってきた それに適した 微粒子の 粘土とい…

長編小説「昭和」その103

人間の食事と 牛のエサが 出来上がった頃 朝間の仕事から 帰って来ます。 冬なら 顔や手を洗うための お湯を 沸かして 用意します。 皆が お膳を 並べて 揃うと 大きな釜から ご飯を よそいます。 おますも 食べなければなりません。 何しろ 競争です。 食べ…

長編小説「昭和」その102

今と違い 家事全般は 時間が掛かります。 ひとつひとつ 仕事をこなす 必要があるのです。 その仕事のなかに 水汲みもあります。 清左衛門の家には 井戸がありません。 飲み水になる様な 水が出る 井戸は 里道を 1町(約109メートル)ばかし行った 共同井戸か…

長編小説「昭和」その101

今なら 電化マンションで 火をおこす必要さえないですが マッチがあるわけでもない この時代の 火起こしは 大変です。 当時の 最新式の 火起こしは 火打ち石と 火種箱 つけ木 を使います。 火打ち石でできた火花を 火種箱で 火にします。 それを 付け木にう…

長編小説「昭和」その100まで

1 この物語は 明治・大正・昭和を 疾風のように駆け抜けた 人々の物語です。 今からもう150年前になるのでしょうか 大きな変化がなかった 平和な江戸時代から 怒濤の 大変革の明治時代になった頃から このお話は始まります。 江戸時代は 農業の世界では 全くと…

長編小説「昭和」その99

戸籍にも登録され 正式に 野田亀太郎になっても カネセイの呼び名は なくなりませんでした。 そこで 「野田」の 表札を上げてみることに しました。 当時は 郵便はもうありましたが 全く一般的ではなく 知らぬ人が 家を訪れることなど なかった時代ですが 「…

長編小説「昭和」その98

姓が不明で 困った 清左衛門は 当時村で一番の 知識を持っていた 寺の住職さんに聞いて みることにしました。 清左衛門と 亀太郎は 西本願寺の末寺の お寺に行きました。 住職は 亀太郎が 字を教えてもらった 先生に当たります。 住職は 過去帳を調べてみる…

長編小説「昭和」その97

お金で納入は ながく小作人を 続けてきた 清左衛門には 青天の霹靂です。 雷よりも びっくりなことでした。 お米を 多量に 売らなければなりません。 お米は 当時は 相場商品になっていて 一夜で お米の売り渡し価格が 変わってしまいます。 良い時に売らな…

長編小説「昭和」その96

体が綺麗になって 嬉しいのか 牛は エサを がつがつと食べ始めました。 亀太郎は 牛の頭を撫でながら 「言うことを 聞いてくれよ」と 言いました。 おますは 横で 「人間でも 牛でも 優しくしないと」と 話しました。 その翌日も おますに付いてきてもらって…

長編小説「昭和」その95

おますが 牛を 引っ張ると 牛は おとなしく付いてきました。 凄い力で 鋤(すき)を引っ張って 田おこしするのです。 牛が引っ張る 鋤は 長い柄が付いていて その一方に 牛が引っ張るところ もう片方に 土に食い込むように 付けられた枝があり その枝のもう…

長編小説「昭和」その94

亀太郎は 牛の世話を よくしました。 牛が働くであろう 田おこしまでには 時間があったので 楽しみでした。 宮水運びをして 牛の世話をして 大変でしたが やっていました。 おますも 牛の世話をしました。 牛にエサを与えたり 牛小屋の 掃除もしました。 牛…

長編小説「昭和」その93

飼うためには 牛小屋 働かせるためには 鞍や 牛用の農具が必要でした。 牛の食費も バカになりません。 当時の 百姓は 極めて粗食でしたが 人間以上の 大食漢の 牛は はるかに 人間以上の 食費が必要でした。 それらの出費を 考えれば 小さな田んぼが かえる…

長編小説「昭和」その92

前にも言ったように 当時は 牛は高いものでした。 凄い力持ちで 田おこしが 人間の何倍という 早さでできてしまいます。 農耕馬が 一般的になるのは 明治時代の 中頃 庶民が牛肉を 食べ始める頃です。 牛馬を 扱う職業の人を 博労と言います。 博労が もう少…

長編小説「昭和」その91

土地を より所とする 封建社会が崩壊し 資本主義が 始まりはじめたのです。 酒は その中で 大きな商品となっていました。 亀太郎と おますの間には 明治6年に次女が生まれ 明治9年に次男が生まれました。 おますは 亀太郎に従って 農繁期には 農仕事 農閑期…

長編小説「昭和」その90

鶴松が 生まれた年の年末には もうひとつ 田んぼを買いました。 清左衛門の家は 清左衛門や 叔父さん 叔母さん それに 亀太郎夫妻 亀太郎の妹と 弟と 働き手も多く 自作地もできて 小作料を払わない 土地が増えて 豊になっていたのです。 宮水運びの 現金収…

長編小説「昭和」その89

政府が どのように変わろうとも 清左衛門の家では せっせと 農業をしていました。 亀太郎とおますは 冬には おかげ参りや 飲みに行くこともせず 宮水運びをしました。 宮水運びで得た 銭は その後も蓄えていました。 他の村人の中には 宮水運びで得た 銭をも…

長編小説「昭和」その88

幕末の頃は 薩長軍が 伊勢神宮の お札を撒いて おかげ参りを 誘発していたと 言われていますが 亀太郎にはわかりません。 今津から 伊勢神宮まで行くには 丸6日かかります。 大阪を過ぎて 生駒の山を越えていくには 大変でした。 おますと相談して 宮水運び…

長編小説「昭和」その87

その年には 薩長軍が 大勢 街道筋を 京都に向かっていました。 大砲を 馬に引かせていました。 兵隊さんは 揃いの 服装で 鉄砲を 持っていました。 刀も 腰に差していて 整然と 隊列を整えて 行進していたそうです。 そのあと 大政奉還があって 代官所の 要…

長編小説「昭和」その86

米倉の 床下に たくさんの 銭が 蓄えられていたのです。 村の集まりで 土地が売りに出ていることを 聞きつけていたのです。 不在地主の 土地が 売りに出されていたのです。 そこで 清左衛門が 買い取ることにしたのです。 地主になる 第一歩です。 村はずれ…

長編小説「昭和」その85

政情不安は 土地の流動化を 生みました。 江戸時代の初めに 決まってしまった 地主と 小作人の 関係も 変わるきっかけとなったのです。 地主の中には 大きな事業を 起こそうと 田畑を 売却するものや 身を持ち崩して 切り売りするものも でてきたのです。 ま…

長編小説「昭和」その84

今津は 街道筋にあります。 亀太郎の家は 街道筋から 少し離れているので 人の動きを まともに見る事ができませんが その噂は 充分に伝わってきます。 結婚した翌年と 初めての子供が生まれた年には 長州征伐の たいそうな 幕府軍 西国街道を 西に進んでいき…

長編小説「昭和」その83

枕屏風を なぜ置くかというと すきま風から 肩口を守るためです。 「お布団で守ればいい」 とお考えの方は いわゆるせんべい布団で 寝たことのない人の 言い分です。 それに 江戸時代は 必ず 横向きに寝ていました。 肩が 張っている 亀太郎は 硬いお布団が …

長編小説「昭和」その82

夏の必需品は 蚊帳ですが 冬にも 寝る時の 特別の 必需品は 枕屏風です。 今は そんなものが 全く必要ではないですが 江戸時代末期の 極めて風通しの良い あるいは よすぎる家では 絶対に必要な品です。 亀太郎が使っている 枕屏風は もちろん 誰かのお古で…